栃木から考える、
日本らしいラグジュアリー
地域から生まれるラグジュアリー。
「その土地らしいラグジュアリーツーリズム」のあり方とは。
2022年12月10日に行われた第3回CJPF LIVEの開催地は栃木。栃木県は、世界遺産である日光の社寺に代表される1200年以上前から受け継がれてきた歴史や、ラムサール条約登録湿地「奥日光の湿原」、日本三名瀑「華厳滝」などの豊かな自然を持ち、明治時代から国際観光地として多くの観光客を迎えてきました。また尚仁沢(塩谷町)など水が豊富で、日本酒づくりも盛ん。豊かな自然に育まれた高品質の野菜、年間を通じて楽しめる名産品のいちごなど多くの農作物を首都圏へ、全国へ提供しています。東武鉄道、JR等で首都圏から約2時間とアクセスも良く、日本の鉄道を通じた近距離ラグジュアリー・ガストロノミーツーリズムの期待も高まる栃木。地域の魅力づくりに取り組む担い手と、国内・海外の有識者と共に「その土地らしいラグジュアリーツーリズム」のあり方を考えました。
第3回 CJPF LIVEにあたって栃木からのメッセージ
変化するラグジュアリーの概念。
世界に求められるラグジュアリーと日本のポテンシャル。
第1部のテーマは、「ラグジュアリーツーリズムにおける共創の可能性」です。 慶應義塾大学教授の白坂氏らは、日本のラグジュアリーのあり方として「JAXURY」という新たな概念を提唱。「日本で「Luxury」という言葉が与えるイメージは、本来の「Luxury」が意味するところと必ずしもあっていない。日本の本物さのなかにもラグジュアリーがあるのではないかと、慶應SDMのラボで検討を進め「ジャクシュアリーJAXURY(Japanʼs Authentic Luxury)」という概念をつくりました。多様な人々の参加のもと、JAXURYに相当する商品・サービスなどをあげていただき、その共通点を集約・分析し10の視点を設定。現在は、各業界の有識者に10の視点にあったJAXURYを実現する製品・サービスをあげていただき、表彰をさせていただいております。今後はこの視点を磨き込み体系化し、もっと多くのJAXURYを育てると共に、世界に向けて発信する取り組みを行っていきます」
ラグジュアリーには2つのタイプがあるとA.T.カーニー 日本法人会長 梅澤氏。「JNTO(日本政府観光局)の定義によると、一つはステータスシンボル(地位や世間の評価)を重視し全ての面で贅沢・ステータスにこだわる「Classic Luxury」。もう一つは近年世界でも増えている、独自性や持続可能性を重視する「Modern Luxury」です。贅沢よりもエコツーリズムやサステナブルツーリズムなど、ユニークな体験、自己変革の旅を求めています。私は富裕層観光で日本が注力すべきはガストロノミーツーリズム、アート・建築をテーマにしたツーリズム、アドベンチャーツーリズムだと考えています。栃木では、クラシックカー・プレステージカーによる2泊3日のツーリング(古河~那須~奥日光)を企画し、好評でした」
「JAXURYには、国際基準であるサステナビリティが必須条件になります」と話すのは国際ガストロノミー学会日本代表 山田氏。「実は、世界3位の温室効果ガスの原因となっているのが食料廃棄です。日本を訪れるインバウンドの目的の1位が食。サステナビリティへの取り組みは避けては通れないと思います。私たちはラグジュアリーブランドと共にフードロスについて取り組んでいます。最近のトピックスとしては、破棄される予定だった日本各地の素材をチョコレートでコーティングし、300年以上の歴史を持つ和紙でボックスをつくり、食品ロスと伝統技能の継承に役立てました。海外のラグジュアリーブランドとのコラボレーションは日本のオーセンティックを発信していく一つの有効な方法になると思います」
776年より続く日光山輪王寺 一山 南照院住職である人見良典氏の考えるラグジュアリーは、感動、満足感。「日光を訪れるそれぞれの方が日光や日本の伝統と文化に触れ、心から感動し満足していただけること、その体験こそがラグジュアリーだと感じています。いま行っているのがザ・リッツ・カールトン日光と連携した「念珠作り体験」、「護摩祈祷」、「座禅体験」、他にも「写経体験」「写仏体験」などを企画。お寺の境内という特別な場所で、日本の文化に気軽に触れて、その体験を通じて満足を持って帰っていただけるよう取り組んでいます」と話してくれました。
日本の文化を海外に紹介し地域文化の継承につなげる取り組みを行っている合同会社GOTOKU代表 アレックス・ブラッドショー氏。「日本のツーリズムは地方に未来があると考えていますが、自分の地域の価値に気づいてない場合が多く、海外目線での地域ブランディングが必要です。例えば侍はちょんまげ、刀というイメージがありますが、実は文化人の一面もある。そこにフォーカスすることで、他の場所ではできない体験を提供するプロジェクトを行っています。各地域で自分たちの資源を再度見直し、どういった価値があるのか、どういうプロモーションをすればいいのかを考え、本当に価値ある地域観光を作る必要があると思います」
地域の担い手と共に考える
ラグジュアリーツーリズムにおける栃木の魅力。
第2部のテーマは、「栃木で実現するラグジュアリーツーリズム」。地域の担い手はどのように地域の魅力を創出しているのでしょうか。
2020 年にオープンしたザ・リッツ・カールトン日光。セールス&マーケティング部 部長 田中氏は「ザ・リッツ・カールトンのフィルターを通じて、地域の魅力を伝えていくのが私たちの役割だと考えています。滞在を通じて地域社会に貢献し、地域とつながる仕組みづくりを目指し、地域のクラフトマンシップを活かしたホテルづくり、地元の食材を活かした四季折々のメニュー、天体観測、寺院での体験アクティビティプログラムなどを提供。日光にはもともと本物があります。地域と共創し、私たちのブランド力を担保にしてもらう形で、魅力を発見できるコンテンツを作っていきます」
株式会社大田原ツーリズム 代表取締役社長 藤井氏は「私たちは、農村発のDMOです。観光地でないところにコンテンツを作り、人が集う場所にする取り組みを行っています。例えば農家民泊。地域の産業をコンテンツ化し120以上の体験コンテンツと宿泊を企画、交流人口・宿泊人数を増やし人が来る場所につくり上げました。さらに地域ブランディングを行うため有形文化財ホテル飯塚邸をリビング・キッチン付きの長期滞在型ホテルにリノベ―ション。宿泊以外は街の中で完結する仕組みをつくり地域の経済活性化も担っています。ラグジュアリーにこだわらず地域の文化に根差したリアル体験を、人を介して提供することが本質的な感動を与えると考えています」
「北関東エリアを世界へ」をテーマに地域のブランディングに取り組んでいるジャパン・ワールド・リンク株式会社 代表取締役 宮地氏。「地域のラグジュアリーツーリズムは秘境的な要素を売りにできる反面、数時間かかってもその場所に来たいと思える特別な内容にする必要があります。栃木県内の4酒蔵をインバウンド向けにブランディングした「SAKE VOYAGE」では、コンテンツを磨き上げて発信すると共に、インバウンド向けの予約システム、音声ガイダンスを開発し受入体制を強化しました。また地域にとって役立つモニターツアーを企画したところ、評価が高かったのは障がい者施設で行っている藍染ツアー。藍染について学べ、参加することが障がい者支援にもつながり、廃液を使って育てたオーガニック食品を食べる面白いツアーです。このようなコンテンツは栃木に沢山あると思いますので、今後も掘り出していきたいです」
栃木県宇都宮市で「オトワ レストラン」を経営する音羽氏。「栃木の風土(テロワール)に根ざすレストランとして土地の気候や風土に合った食材を、風土に合った調理法でつくりだす「とちぎフレンチ」を提供するほか、子どもたちの食育、出張料理講習なども行い食文化をサポートしています。また厳格な審査をクリアしたホテル・レストランのみが加盟できる世界的なホテル・レストランの会員組織「ルレ・エ・シャトー」の一員として栃木の食文化を世界に発信することも重要な役割です」
第3回 CJPF LIVEにあたって
登壇者プロフィール
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白坂 成功氏
慶應義塾大学大学院 後期博士課程修了(システムエンジニアリング学)。 2010年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 准教授。2017年同教授。慶應SDM研究所オーセンティック・ラクシュアリーラボにてJAXURY(ジャクシュアリー)研究に携わる。
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梅澤 高明氏
日米で25年にわたり戦略・イノベーション・都市開発関連で企業を支援。国内最大規模の都心型イノベーション拠点CIC Tokyoを2020年秋に虎ノ門に開設、スタートアップを中心とするコミュニティを構築中。観光庁・文化庁による全国各地の観光資源事業の立ち上げを支援し、政府委員会で富裕層観光(観光庁)、知財戦略(内閣府)などの検討に関与。
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山田 早輝子氏
国連やユネスコと提携し食について研究する国際ガストロノミー学会の日本代表、(株)フードロスバンクの代表取締役を務める。ロスになる食材などのブランディングのほか、企業と一緒にサステナビリティやダイバーシティを訴えるイベント等を開催し、多角的に社会問題に取り組む。Japan TimesのSustainable Award、LVMHのVeuve Cliquot 影響力のある女性賞他、多数受賞。活動が国連WFFにマスタークラスとして教材になる。ロサンゼルス市SDG5「チェンジ」上席戦略アドバイザー、東京ベイESGプロジェクト国際発信実行委員など多数兼務スペイン王国国王陛下よりイザベラ•ラ・カトリカ勲章を受賞。米国にて映画製作会社Splendent Media代表も務め、作品がベニス国際映画祭にて受賞、現在米国WBと進撃の巨人プロデュース中。
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人見 良典(ひとみ りょうてん)氏
東照宮、二荒山神社とあわせて「二社一寺」と称される輪王寺の執行として、信徒のご祈祷、法要の巌修、参拝者の案内など最高先任者として運営に携わる。境内は東照宮、二荒山神社の境内とともに「日光山内」として国の史跡に指定され、「日光の社寺」として世界遺産に登録されている。
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アレックス・ブラッドショー氏
イギリス・シェフィールド出身。ユネスコ世界文化遺産に登録される仙巌園で海外営業部長を務めるほか、鹿児島県海外広報官や全国での講演など精力的に活動。2019年には合同会社GOTOKUを創業し、全国の自治体や企業に対しラグジュアリートラベラー市場獲得に向けたコンサルティング等も行う。
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田中 基規氏
パレスホテル、ザ・サヴォイグループ(現メイボ―ンホテルグループ)、ザ・ぺニンシュラ東京(開業メンバー)、コンラッド東京など20年以上にわたりラグジュアリーホテルでの勤務を経験後、ザ・リッツ・カールトン日光に開業メンバーとして参画。モットーは「本物を体験できるコンテンツ創造と滞在を通して地域社会に貢献すること」。
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藤井 大介氏
栃木の農家から直接仕入れた農畜産物を加工する「下野農園」惣菜事業・飲食事業、経営コンサル事業を展開。2年連続で重点支援DMOに選出。180軒もの農家民泊を中心とした農村観光を企画する旅行業、街一体型の有形文化財ホテル飯塚邸を運営。内閣官房、農林水産省、観光庁、文化庁等の委員を歴任。
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宮地 アンガス氏
英国で在英日系企業のプロモーションに携わった後、訪日外国人客(インバウンド)の誘客事業などを手掛けるジャパン・ワールド・リンクを設立。2018年、2019年、2020年に北関東インバウンドアワードや、北関東インバウンドサミットを開催し、北関東エリアの広域連携に取り組む。
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音羽 香菜氏
米国やイタリアへの留学経験があり、ホスピタリティやスローフード活動の根底を学び、世界的なホテル・レストランの会員組織である「ルレ・エ・シャトー」の加盟レストラン「オトワ レストラン」のサービス、ウェディングプランナーとして活躍。子どもたちの食育、出張料理講習なども行う。2023年1月より「ルレ・エ・シャトー」の執行役員に就任。
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渡邉 賢一氏
栃木県栃木市出身。学習院大学を卒業後、KDDI、朝日新聞社に勤務。カリフォルニア大学サンディエゴ校にてソーシャル・マーケティング学、メディア戦略学等を学び、ワシントン大学にて国際ビジネス学を専攻。帰国後は朝日新聞社に復職し日本政府との連携事業を担当し、2008年より内閣官房 地域活性化統合事務局 に出向。2010年に地域プロデュース法人 (社)元気ジャパン、2015年に官民連携型ソーシャル・プロデュース法人(株)XPJP、2021年に宇宙デザイン法人(社)Space SAGAを立ち上げ、行政、企業、メディア、市民と連携したプロジェクト開発を全国で実装。京都芸術大学 客員教授。東北芸術工科大学 客員教授。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所 研究員。趣味ラクロス。
Answers to questions
CJPF LIVEにつきまして、皆様より頂戴いたしました質問や回答につきましてご回答させていただきます。
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実際にAIによるメニュー開発など、テクノロジーを活用した食の事例はあるんでしょうか?まだ施策段階ではありますが、ビーガンの領域において、いくつかの先進事例はあります。
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実際にAIによるメニュー開発など、テクノロジーを活用した食の事例はあるんでしょうか?まだ施策段階ではありますが、ビーガンの領域において、いくつかの先進事例はあります。
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