進む地域の食・食文化。
広島から考える新たな
食の魅力の創造と発信。
伝統を継承。ゼロから創造。逆境をチャンスに。 多彩な広島の新しい食・食文化のつくり方。
2022年11月10日に行われた第2回CJPF LIVEの開催地は、広島。2023年に主要7カ国首脳会議(G7サミット)が行われることもあり国内外から注目が高まっています。広島は北の中国山地から南の瀬戸内海まで階段状の地形を持ち、全体的には温暖な気候ながら北部は多雪地域もあるなど日本の縮図ともいえる地域。お好み焼、牡蠣、もみじ饅頭などのソウルフードの印象が先行していますが、豊かな自然から生み出される多彩な食材と食文化を有する地域です。今回は“次世代の地域の担い手”と海外目線の有識者を交え、「広島の食の魅力・未来」について語り合いました。
第2回 CJPF LIVEにあたって広島からのメッセージ
地元の食・食文化の歴史・伝統に対する敬意が、
「共創」による新しい価値の創造につながる。
新しい魅力を創出するためには、様々な壁があります。太田さんはゼロから自分の想いを実現できた原動力として「共創」という言葉をあげました。
「このプロジェクトは私が農家さんを訪問し、ブドウを分けてもらうところから始まりました。最初は半信半疑だった農家さんたちが、ワインができ、ワイナリー、レストランとできるにつれて、瀬戸内醸造所の可能性を信じサポートしてくださる。私たちが広島の食とワインのペアリングを行い、農家さんの想いも伝えていくことで農業や食にシナジーを与えていけることが嬉しいです」と語ります。
新たな魅力を発信する際には「発信と開発」が大切だとポールさん。「特に海外に発信する場合は、地元の食や食材がなぜ愛されているのか、作り手の想いや苦労などを含めた応援したくなるストーリー作りが必要です。また今後はヴィーガン向けの食など多様性に対応した開発にも期待したいです」
ストーリー性については「『吟醸を世界の言葉に』が、私のテーマ」と今田さん。「吟醸の素晴らしさをもっと海外の人に知ってもらいたいという想いを込めて商品をつくっています。例えば牡蠣を美味しく食べるために、焼酎の製造に用いられる白麹菌を使いレモンのような酸味をだした「海風土」や、肉料理や中華料理などにあわせられるよう仕込み水のかわりに吟醸酒を使った甘みの濃い「レガシー」などで、日本酒の大きな可能性を伝えたいです」と語ってくれました。
逆境はチャンス。
共創で新たな価値をデザインする。
第2部のテーマは、「ピンチから生まれた地方発『リバース・イノベーション』」。広島で生まれたイノベーションが世界の視点を通じ新しいものへと進化していく2つの事例を紹介します。
事例1 広島の番組制作会社TSSプロダクション
番組制作会社でありながら、その枠を超えて海外販路開拓支援事業「セカイタク」を手掛けています。業績低下を打開するため、自らWeb番組を立ち上げたのがきっかけでした。フランスのプロデューサーを探し番組の認知度を高め、人物像にフォーカスしたドキュメンタリーでアーティストのフランスでの大ブレイクを実現。このノウハウを活かしジーンズメーカーの海外売上を2倍に。現在、中小企業を中心とした海外販路拡大のサポートまで行っています。
事例2 立命館大学「ガストロエデュプロジェクト」
立命館大学ではコロナ禍にオンライン授業であることを活かし、世界の食に関わる生産者をオンラインでつなぎ、日本の食材の新たな可能性を見出す「ガストロエデュプロジェクト(GAstroEdu=食科学×宇宙×教育の造語)」を推進。その取り組みの一つが日本一のレモン生産量を誇る広島県・尾道市瀬戸田町とイタリア・アマルフィが連携した「レモンアドベンチャー」でした。このワークショップをきっかけに瀬戸田レモンを使ったレモンティラミスの開発・販売がスタート。新たな共創を生み出しました。
過去から未来をつなぐ縦軸の継承と、
地域・海外をつなぐ横軸の展開。
「広島の食・食文化」について議論した第2回CJPF LIVE。そこから見えてきた地域の食の新たな魅力創造とは何か。クールジャパン・プロデューサー楠本さんはこう述べます。
「第2回LIVEに参加し、大人が本気で夢を見て熱く語りあう、この会場の熱気こそが新しいクールジャパンなのだと思いました。夢を見ることは、未来に向かうこと。そのために必要なのは、私たちが自身の座標軸をしっかり持ち縦軸・横軸を組み合わせていくことです。例えば広島の自然、歴史、食文化を守り育てる過去から未来に向かう縦軸の継承と、地域との共創や海外への発信という横軸の展開。このタテとヨコの関係を見直し考え、構築していく。その成果を未来につなげ、みんなで夢を実現していきたいです」
登壇者プロフィール
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今田 美穂氏
広島県安芸津町(現、東広島市)出身。明治大学卒業。大手百貨店、伝統芸能団体に勤務後、Uターンし1994年に今田酒造本店に入社。広島らしい、安芸津らしいお酒を造りたいと100年以上前に途絶えた酒米の在来種「八反草(はったんそう)」を復活させた。また積極的に海外マーケットを開拓。「富久長 八反草 純米吟醸」はフランスのコンテスト「Kura Master」で最高位プラチナ賞を2年連続受賞、スペインの国際酒類コンテスト CINVE2021 にて金賞を受賞するなど海外からも高い評価を得ている。2020年BBC「100人の女性」に日本人として唯一選出される。
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太田 祐也氏
広島県三原市出身。明治大学進学をきっかけに上京。25歳で株式会社フォーシーを立ち上げ地方創生のコンサルティングを行う。三原市で食に関する事業に関わったことをきっかけに、自ら地方の抱える課題を解決したいと2019年「SETOUCHIを旅するワイン、SETOUCHIを旅するワイナリー」をコンセプトに瀬戸内醸造所株式会社を設立。瀬戸内の様々な産地のワインをつくり瀬戸内の食とペアリングし瀬戸内のテロワール(風土)を国内外に発信。農業、食文化の継承など、地域課題の解決に取り組んでいる。
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Paul Walsh ポール・ウォルシュ氏
イギリス出身。大学卒業後、JETプログラムに参加し、大分で3年間英語講師として活動。その後、アジア各国を旅し広島へ。広島経済大学で講師を務めながら、2000年に広島の魅力を英語で発信する「GetHiroshima.com」 を立ち上げ。広島市内にある飲食店中心の観光案内マップやフリーマガジン「Get Hiroshima」も発行。日本を訪れる海外からの観光客と日本人がつながる場所として、飲食店が大事だと考え特に「食」の情報発信に注力。2018年、株式会社JizoHatを設立。現在は、ウェブサイトやSNSを活用した広島の魅力とローカルニュースの発信、インバウンド観光に関するコンサルティング、自治体のプロモーション企画に携わっている。
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白神 道空 氏
2009年フランスで放送するレギュラー番組「Japan in Motion」を立ち上げ、プロモーションと販路開拓を一元化したプラットフォームを構築。広島県産牡蠣や日本酒事業、農林水産省や経済産業省など海外市場開拓推進事業で海外展開プロデューサーを務める。京都のお茶を始め、長野県安曇野市の特産・生鮮わさびや広島県の食加工品などをフランス・モナコ・ロサンゼルス・タイでテスト販売やマーケティング調査などを行いながら販路開拓を実施。「総務大臣賞」受賞。内閣府「地域活性化伝道師」任命。世界的なコロナ感染拡大した2019年から約4年で、225商品(食加工品)の海外販路開拓を支援し、数々の販路開拓に成功している。
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野中 朋美 氏
専門は、生産システム工学、サービス工学。博士(システムエンジニアリング学)。慶應義塾大学環境情報学部卒業、企業でWEBマーケティング職ののち、慶應義塾大学大学院SDM研究科の一期生として修士課程・後期博士課程修了。神戸大学大学院システム情報学研究科特命助教、青山学院大学理工学部経営システム工学科助教などを経て現職。 近年は、持続可能な社会・ビジネスシステムデザイン、従業員満足を考慮した人・機械共創サービス生産システムデザイン研究に従事。「食をテーマに地域と人をつなぐ、地域価値共創GAstroEduプロジェクト」や「人と機械が共創する食サービスシステムデザイン」「広島県尾道瀬戸田レモンプロジェクト」「北海道倶知安町ポテトアドベンチャー」「岩手県岩泉町牛アドベンチャー」などに関わる
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楠本 修二郎 氏
福岡県出身。早稲田大学政治経済学部卒、リクルートコスモス入社。1993年大前研一事務所を経て2001年、株式会社カフェ・カンパニー株式会社設立。「CAFE=Community Access for Everyone」を人と人の感性・共感コミュニティを創造する次世代に必要不可欠なインフラとして位置づけ、飲食店舗の企画・運営事業、商業施設等のプロデュースや地域活性化事業を手掛ける。2021年NTTドコモと「日本の食を愛する、すべての人の思い・体験・技術を未来につなぎ、世界中へ拡げる」をビジョンに、株式会社グッドイートカンパニーを設立。現在、内閣府が推進するクールジャパン戦略会議のメンバー。
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渡邉 賢一 氏
栃木県栃木市出身。学習院大学を卒業後、KDDI、朝日新聞社に勤務。カリフォルニア大学サンディエゴ校にてソーシャル・マーケティング学、メディア戦略学等を学び、ワシントン大学にて国際ビジネス学を専攻。帰国後は朝日新聞社に復職し日本政府との連携事業を担当し、2008年より内閣官房 地域活性化統合事務局 に出向。2010年に地域プロデュース法人 (社)元気ジャパン、2015年に官民連携型ソーシャル・プロデュース法人(株)XPJP、2021年に宇宙デザイン法人(社)Space SAGAを立ち上げ、行政、企業、メディア、市民と連携したプロジェクト開発を全国で実装。京都芸術大学 客員教授。東北芸術工科大学 客員教授。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所 研究員。趣味ラクロス。
Answers to questions
CJPF LIVEにつきまして、皆様より頂戴いたしました質問や回答につきましてご回答させていただきます。
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実際にAIによるメニュー開発など、テクノロジーを活用した食の事例はあるんでしょうか?まだ施策段階ではありますが、ビーガンの領域において、いくつかの先進事例はあります。
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