海外からの友人やお客様が来日されるたび、必ずと言っていいほどリクエストされるのは寿司です。
ご存知の通り、近年世界的に寿司や日本食は人気になっており、各国で急速な店舗展開がされていますが、やはり日本で食べるそれは格別に感じます。
地球の表面の約70%は海であり、古代より人々は漁業を営み、それを食すことで人類の貴重なタンパク源としていました。しかしその中でも、日本の魚文化は特別な存在であると言えます。
日本は島国であり、面積から見ると小さい国ながら世界のトップ10に入る海岸の長さを持っています。釣りや海産物の文化にも長い歴史があり、約7500年以上前、縄文時代にも定置網を利用しており、魚は生きていく上で大切な食べ物とされていました。
現在もなお、魚は日本の貴重なタンパク源であり、東京にある豊洲市場は世界一の規模を誇る卸売り市場として知られています。毎日約1,400トンの魚が世界から集まり、また世界各国に輸出されています。世界中からフィッシュ•ガストロノミーを求めて来日する人は後を絶ちません。なぜなら日本には、古くから連綿と続いてきた魚の食文化があるからです。生産、加工、流通、消費までの過程は世界のどこよりも優れており、結果的に日本で消費される魚料理は鮮度が良く、美味しいのです。
私の考える『フィッシュ•ガストロノミー』とは、これまで日本が培ってきた魚文化を背景に出来るものです。鮮度が命と言いますが、日本の魚は最高の状態でシェフの手元に届きます。最高のパーフォースが発揮できるのも、最高の食材がシェフの手元に最もいい状態で届くからだと言っても過言ではありません。文化、歴史、技術、全ての調和によって世界が熱望するJapanese Seafood Gastronomyが出来上がるのです。
流通技術、加工技術、料理技術の高さにも関わらず、国内では過疎化や若い世代の魚離れにより、年々水産物の消費が減少しています。一方、世界的な人口増加と食糧危機の予測により、これからの持続可能なタンパク源の確保は緊急の課題です。世界的にはヘルシー思考や日本食の流行により、魚の需要は増加傾向にあります。いよいよ日本の鮮度の良い魚と同様、フィッシュ•ガストロノミーは多くの人に求められており、世界の桧舞台に立つ時期が近付いています。しかしながら、日本が世界へ品質の高い魚と料理のノウハウを供給する土壌はあるでしょうか?デジタル•トランスフォーメーションにより生産現場の効率を上げたり、輸出専用の漁場を作るなどして初めて、日本政府の輸出目的を達成できると考えております。
日本にある素晴らしい言葉、『温故知新』にあるように、新しい創造には過去から学ぶことが必要と考えます。これまでに培った日本の高度な水産技術を基礎にして、それらをテクノロジー化することにより、日本の水産技術は更なる進化を遂げることとなるでしょう。今後さらに高まるであろうSDGsにも配慮し、最先端のテクノロジーやAIを駆使して、持続可能な魚の供給が、日本のみならず世界にも求められています。