CJPF LIVE CARAVAN Bishu
日本人の視点による日本の魅力ではなく、海外出身者の視点で日本の魅力を探求していくCJPF LIVE CARAVAN。今回のテーマは「日本の繊維」です。CJプロデューサーであるコチュ・オヤ氏、ダコスタ・レティシア氏が、世界三大毛織物の産地である尾州エリアに本社を置き世界のラグジュアリーブランドから注目されている「三星毛糸」の魅力を独自の視点で紹介します。
自社の魅力を最大化できる海外にチャンスを見出した老舗テキスタイルメーカーの改革
尾州は、木曽川流域の豊かな自然に恵まれたエリアです。木曽川の水はウールの上質な風合いを引き出すのに適した軟水で、古くから毛織物産業が栄えてきました。糸から織物に加工されるまでの各工程において専門性の高い企業が集積し、企業間で連携して作り上げるのが特徴であり、現在国内の毛織物の約7割を生産しています。
繊維産業は日本の近代化や第二次世界大戦後の経済復興を支えてきた産業ですが、化学繊維の台頭や海外での大量生産による安価な繊維が流入し、1990年代をピークに国内市場は縮小、厳しい状況が続いています。
三星毛糸の創業は1887年。紳士用スーツに使用される高品質な生地を中心に手掛けてきました。しかし5代目の岩田真吾さんが代表取締役に就任した2010年は市場の縮小に加え、リーマンショックの影響もあり経営は大きな困難に直面していました。
そこで岩田さんは従来の商社を通じた販売から転換し、品質を重視する海外のラグジュアリーブランドと直接取引することを決断します。2012年にパリで行われる世界最高峰の生地展示会「プルミエール・ヴィジョン・パリ」への出展をはじめ積極的に海外展示会に参加し、直接、ブランドの声を聞くことで製品を磨き上げていきました。
多彩なブランドの要望に迅速に応える企画力・生産体制、至福の手触りを実現する高密度に織り上げる技術、黒でも何十通りの繊細な色のニュアンスをつくる表現力が評価され、2015年にはイタリアを代表する高級ブランドであるエルメネジルド・ゼニアの「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」に選出されたほか、ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールなど数多くの高級ブランドを傘下に置くLVMHグループをはじめ、世界のラグジュアリーブランドに採用されています。
またサステナビリティにも注力し、一般消費者から製品を回収して再生したウール製品のブランド「ReBirth WOOL」を展開。日本のモノづくりの価値を伝える自社ブランド「MITSUBOSHI1887」では、ウールの機能性を活かした「23時間を快適にするTシャツ」を制作するなど、伝統技術と最新技術を融合させ尾州の毛織物の価値を高めるため進化を続けています。
尾州の魅力を発信する「ひつじサミット尾州」で地域の新しい共創のかたちをつくる。
尾州は、企業間の連携でモノづくりを発展させてきた地域。岩田さんは、尾州の伝統である毛織物産業を持続可能なものにするための産業観光イベント「ひつじサミット尾州」を2021 年から開催しています。きっかけは、新型コロナ感染症の拡大。衣服の販売不振が続き倒産する企業もあり、「このままでは、尾州という地域が消滅してしまう」という危機感が岩田さんを動かしました。尾州を存続させるためには、地域の連携が不可欠。志を同じくする地域の事業後継者と一緒に企画し、工場見学やワークショップ、交流会を通じて使い手と作り手が交流することで、産業や地域を活性化することを目指す「ひつじサミット尾州」を作り上げました。「着れる、食べれる、楽しめる。ひつじと紡ぐサスティナブルエンターテイメント」をキャッチコピーに、初年度の 2021年に地元企業51社が参加し、来場者1万2,000人。2024年までに累計 5万5000人を集める人気のイベントとなっています。尾州の認知を広げるほか、参加企業間で新しいコラボレーションがスタートし、連携してDXの活用に取り組む「ひつじDX」が始動するなど、尾州の新しい共創のかたちを生み出しています。
三星毛糸は「100年すてきカンパニー」という目標を掲げ、過去100年間にわたって築いてきた信頼を基盤に、これからの100年を見据えた持続可能なものづくりを目指していきます。
Official website of Mitsuboshi Group:
https://mitsu-boshi.jp/
Brand “MITSUBOSHI1887” website:
https://www.mitsuboshi1887.com/
登壇者プロフィール
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コチュ・オヤ
株式会社Oyraa 代表取締役社長
クールジャパン・プロデューサー -
ダコスタ・レティシア
JapanExperience エクスペリエンス・マネージャ
クールジャパン・プロデューサー