CJPF LAB #1 ~総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」の海外展開戦略とは?~

CJPF では、クールジャパン関連産業の海外展開戦略に関心のある企業や専門家の情報共有・意見交換の場として「CJPF LAB(研究会)」を定期的に開催しています。各分野のクールジャパンの先駆者やグローバルな視点での成功事例など、官民連携プラットフォーム会員やCJプロデューサーを巻き込みながらノウハウの共有を進め、クールジャパン関係者の事業拡大や、関係者同士の連携の機会創出を目指します。
第一回は、総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」等を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス社 執行役員 海外事業MD戦略担当 渡辺 和博氏、フレッシュフード海外事業MD戦略本部 本部長 檜山 健一氏より、同社の海外展開戦略についてご講演いただきました。(開催日:2025年1月23日)

「ドン・キホーテ」の海外展開戦略とは?

■海外事業の可能性
同社の海外事業の過去・現在・未来についてお話いただきました。2017年に14だった海外店舗数は、現在110店舗(2024年6月期)まで急増しており、海外売り上げも359億円から3296億円(2024年6月期)と大幅増となっています。同社の海外展開の特徴の一つとして、アジアでは日本産品に特化し、アメリカでは日本産品の強化(日本+ローカルの融合など)した事業を展開するなど、地域ごとに取扱商品群を細かく分けている点が挙げられます。また国内の「convenience+discount+amusement)」に対し、海外では「美味・健康・環境」をストアコンセプトとするなど、ジャパンブランド・スペシャリティストアという戦略を取っている点も特徴的です。今後の海外戦略としては、「日本人気の今、機を逃さないスピーディーな事業展開」、「消費者を飽きさせない商品展開の速さ」、「経済状況・消費行動に対する逐次対応」をキーワードに掲げています。

■『食の可能性』・生鮮食品/加工食品
海外で爆発的な人気となっている日本産食品の実態について解説いただきました。例えばさつまいもは、焼き芋の甘さと美味しさが大好評であり、SNSを活用し更なる販売拡大を図っています。海外展開における課題についても細かく分析しており、味覚、規格、品質等、様々な側面から国内と海外の違いを捉え、次のビジネスにつなげています。また、一次生産者・物流関係者・自治体等を対象としたパートナーシップ組織「PPIC(Pan Pacific International Club)」では、生産者、流通、官公庁・自治体との連携により、日本産品の輸出拡大に貢献されています。

■『非食品の可能性』・ビューティ/ホビー関連
非食品分野は、『日本製品の強み』を活かした品揃えに特化し、「美(ビューティ、コスメ等)、「文化(キャラクター、アニメ等)」、「技術(機能品、便利グッズ等)」を重点カテゴリーに定め、ジャパンブランドスペシャリティストアとして展開しています。各国における人気商品についてご解説いただきました。

■『販促の可能性』・顧客へのラブレター
本パートでは、同社の競争戦略の根幹である「ローカライズ(権限委譲)」について解説いただきました。企業原理“顧客最優先主義”に則り、現場従業員へ権限委譲しており、何の商品を仕入れ、どこでどの売価で販売するか等を現場起点で考え、更には、ポップや陳列の方法、動画による説明、パッケージの工夫など、現地従業員による様々な工夫が、日本商品のヒットを生み出しています。

■『連携の可能性』・官民(製販物)連携の強化
官民連携の事例についてお話しいただきました。生産から輸出入、販売に至るバリューチェーンの中で、同社が持つ顧客の生の声や販売データの共有を進め、産業全体を発展させていくことを目指しています。
政府との連携においては、海外への販売に必要な法令への対応を農水省、JETRO本部等と連携して進めた事例をご紹介いただきました。その他の取組として、輸出に関する煩雑なオペレーションに対して、内閣府の実証実験による流通経路や産地情報等のデータの利活用の事例をご紹介いただきました。

最後に政府への要望として、「産地/メーカーの輸出に対する機運醸成」、「積極的な規制緩和のご検討」、「物流・貿易支援のご検討」、「プロモーション支援のご検討」の4点を提言いただき、第一回CJPF LABは閉幕を迎えました。