「VISON」に見る、
テロワール×SBNRによる
観光立国の方向性

The Direction of Japan as a Tourism Hotspot—Terroir and SBNR through VISON

BuzzFeed Japan株式会社
CRO
崎川真澄氏

ワインの世界でよく耳にするテロワール(terroir)は、フランス語で大地を意味する「TERRE(テール)」が語源で、食品等の生育地の地理、地勢、気候による特徴=土地に根ざすものという意味である。
米国と日本における最大級のデジタルメディアであるバズフィード上では、様々な分野の記事を掲載しているが、コロナ禍で自由に帰省や旅行ができない中、「地域に根ざす食」関連のニュースへの関心が高まっており、21年度は、『#地元のおいしいやつ』 をつけた各地のグルメ記事を計34本配信、SNSで2万5千以上の拡散、125万以上のPVを獲得した。これら現在の読者の関心をポストコロナの観光に如何に活かすか、を考えてみたい。
2021年7月に三重県に誕生した日本最大級の商業リゾート「VISON」のコンセプトは『地域とともに』。地元熊野灘でとれた魚介類や採れたての野菜が並ぶマルシェやレストラン、ホテルを中心に「癒・食・知」を軸とし、伝統と革新を融合させる新しい地域経済の活性化を目的としている。同時に「VISON」は、人口減少と高齢化、農業や林業の担い手不足など、日本の多くの地方の町と同じような地域課題の解決を目指す役割を担っているが、そのコアコンセプトがテロワール=地産地消だ。
テロワールを地域外の人たちに提供し、顧客単価の高い地元外の来訪者を呼び込むことで外貨を獲得する。それにより高い賃金を維持し良質な雇用を生み出す。テロワール概念の実践、つまり地域のもつ食材、文化の良さや世界観を料理を通じて地域外来訪者に伝えることで、地域の社会課題を解決していく。
「VISON」は、1000人規模の新規雇用を産み地域の課題を解決するために、同県の代表的な観光地である伊勢神宮と同等の規模である年間800万人程度の集客を目指している。
一方、いま世界的には、マインドフルネスや瞑想・ヨガブームが起きており、SBNR= Spiritual but not religious、つまり宗教的ではないがスピリチュアル的なことへの関心が高まっている。米国ピュー・リサーチ・センターのデータによれば、米国の成人の約4分の1(27%)が、自分たちをSBNRと分類している。コロナが長引くことにより、さらにこの傾向は強まっていると推測され、SBNRの視点は今後のわれわれの生活になくてはならないものになるだろう。
日本全国で、この「VISON」×伊勢神宮のような、テロワール×SBNRという新たなフレームワークによるデスティネーション開発を行うことは、ポストコロナの時代において、SDGsと経済成長を両立する骨太の観光施策となりうる。
この地域食文化×スピリチュアル的スポットという組み合わせは、スペインの、サン・セバスチャンとサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路と同様だ。日本には、四国の遍路道や永平寺、平泉中尊寺ほか、地域の食文化×スピリチュアル的なデスティネーションには事欠かないため、極めて有効な観光立国施策となろう。
ただし、これらの一定の教養が必要となる情報を発信する際には、年齢や性別などの属性だけを元にYouTubeやインスタグラム等のプラットフォームでターゲティング発信をすることでは、届けたい人にきちんと情報が届けられない。そもそも、地産地消、地域の社会課題解決などの考え方や概念に慣れ親しんで居ない人には用語からして馴染みがないため、信頼性の高いハイコンテキストなメディア上での情報発信が必要不可欠だ。
テロワールやスピリチュアル的な文化など、言語化しにくい日本固有の観光資源ソフトの魅力・強みの可視化を行い、日本国内や世界各国の読者に、①気づきを与えての興味喚起②理解促進③検討の後押しを図り、「メディアを通じての社会変革」を実現してゆく事こそ、これからのグローバルメディアの役割だと考えている。

BuzzFeed Japan株式会社 CRO
崎川真澄氏