地域の魅力を掘り起こし、
ストーリーで新たな力を。
次世代の地域の担い手と
考えるワークショップ。
2024年3月13日、内閣府クールジャパン(CJPF)と慶應SDM(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科)は共同で、「地域の事業に、ストーリーで新たな力を」をテーマに初めてのワークショップを開催しました。 場所は、地域での価値創造に取り組む人々がつながる場である東京ミッドタウン八重洲「POTLUCK YAESU(ポットラック ヤエス)」。 当日は、全国から地域創生に興味を持つ年齢も職業も様々な32名に参加いただきました。 第一部は、CJPFが出会った地域の担い手2名による特別講演とクールジャパン・プロデューサーとの対談。第二部は、今までCJPFがインタビューしてきた全国の事業者の事業戦略や広報戦略を分析し作られたフレームワークを体験するプロクラムです。参加者にとって多くの気づきや新しい出会いがあり、今後の地域での活動に活かしてもらえる有意義な時間となりました。
クールジャパン地域の担い手の講演と、
クールジャパン・プロデューサーとの対談。
第一部は、CJPFが出会った地域の担い手による特別講演とクールジャパン・プロデューサーとの対談です。講演は長野県・佐久市のKURABITO STAY 田澤さん、広島県・三原市の瀬戸内醸造所の太田さん。二人とも東京からUターンし、地元の魅力を掘り起こした事業を展開し、地域の活性化につなげています。
田澤 麻里香氏
株式会社KURABITO STAY 代表取締役
「酒蔵で本物の酒造りに参加できる新しい酒蔵ツーリズム」
■ホームページ:https://kurabitostay.com/about/
■CJPF取材記事:
蔵人になれるまち。酒蔵での本物の酒造りに参加できる新しい酒蔵ツーリズムが、日本酒の価値を向上させる
田澤さんは旅行会社・ワイン商社に勤務し、結婚・出産を機に退職。故郷の小諸市で観光局の立ち上げに参加し、300年以上、地域の産業として発展してきた佐久の日本酒に着目。
2020年、かつて蔵人が寝泊まりしていた築100年の古民家をリノベーションし、本物の蔵人の仕事・醸造過程を体験しながら宿泊するクラビトステイを開業しました。現在、国内外から多くの観光客が訪れ、地域の集客機能を担うことで地域経済へ大きな効果をもたらしています。
「事業を持続させるためには1時間滞在してくれる人を100人にするのではなく、100時間滞在してくれる人1人に出会えるツーリズムを作ることが必要です。クラビトステイが集客を担い、宿泊客に地域を回遊していただくことで、地域の飲食店にもお客様をシェアリングする仕組みを作っています。宿泊費は1泊2日5万9000円、2泊3日9万9000円に設定。安かろう、悪かろうではなく、質の高いサービスを提供し、地域側が正当な対価を得て、お客様が満足する、みんなが幸せになるツーリズムを作っています。」
太田 祐也氏
瀬戸内醸造所株式会社 代表取締役社長/株式会社フォーシー 代表取締役
「地域の生産者と共創し、SETOUCHIテロワールを発信」
■ホームページ:https://setouchijozojo.jp/
■CJPF取材記事:新しい価値、「瀬戸内テロワール」の創造
太田さんは、広島県三原市出身。東京の大学を卒業後、コンサルティング会社を経て、2009年、株式会社フォーシーを設立。2019年、瀬戸内醸造所株式会社を設立。瀬戸内エリアの1次産業を次の世代に継承することをテーマに取り組んでいます。
「地域のブランディングをサポートする中で、どの地域も1次産業が衰退しているという課題にぶつかりました。一方で、観光の楽しみで『食』は上位になっている。このギャップを埋めることで地域が潤うのではないかと考えました。あまりイメージがないかと思いますが、実は岡山県はぶどう生産量全国3位、広島は10位と瀬戸内はぶどうの産地。ワインは、その土地のテロワールを一番表現できるお酒です。各地の生産者と連携しお酒を作ることで、その土地のテロワールを国内外へ発信するほか、生産者へぶどうの苗木を提供し全量買取し安定収入につなげ、もともと塩田だった耕作放棄地を自社農園化するなど、地域と一緒に様々な活動を行っています。」
田澤さん、太田さんと、
クールジャパン・プロデューサー コチュ・オヤさんとの
対談トークセッション。
対談トークセッションは田澤さん、太田さんと、日本在住17年、163カ国の翻訳アプリを運営するクールジャパン・プロデューサー コチュ・オヤさんとのトークセッション。司会は、第二部のフレームワークの開発に携わった慶應SDMの広瀬さんです。
田澤さん、太田さんの講演を受けて、コチュさんは外国人目線で感じた地域の事業の魅力について、こう話します。「日本全国にはまだまだ眠っている魅力・文化などのコンテンツが沢山あります。それをいかに各地域が、海外の旅行者に響く形にして発信していくかが重要です。そういった意味でクラビトステイは本格的な体験型であり、1時間滞在する人を100人作るのではなく、100時間滞在する1人を作るという考え方が、日本ファンを作るためにはすごく大切なことだと思います。瀬戸内醸造所は、一次産業を含めて、地域に眠っている魅力を共創することで形にしている貴重な取り組みだと思います」
田澤さんは地域の担い手として必要な3つの力を挙げてくれました。「一つ目が、地域の人にとっては当たり前の風景や産業も、世界から見たら日本のこの地域にしかない魅力的なものが、まだまだ沢山あると思います。まずそれに気が付くセンサーを持つこと、2つ目はそれをどういうサービス・商品にしたら、お客様が気持ち良く対価を払ってくださるものになるかを考え具現化し、提供していく力、そして事業を持続させていく力、この三つの能力が必要。その能力を磨く努力を、私もずっと続けています。」
太田さんが大切にしているのは多角的な視点と地域との共創です。「一つの物事を10の視点から見ることがすごく重要だと思います。視点を変えると、できることが広がります。また地域で、自分たちの活動を認めてくださる方に、小さくてもいいからきちんと価値を返して、地域の方々に認めて応援していただける関係を築くことが大切です。」
「いまの日本に圧倒的に欠けているのはストーリーテリング」だとコチュさんは語ります。「歴史や文化を観光コンテンツとして作りこんでいる地域も多いと思いますけれど、それが海外に伝わる形で発信されていないと感じています。そこは私たちクールジャパンに関わるメンバーがサポートしていくところですが、まだまだ足りていません。海外のお客様は、その国でしかできない体験をした時に、いっそう感動のレベルが高まります。そんな体験を増やしていけたらいいですね。」
「日本人は真面目で奥ゆかしいので、コチュさんがおっしゃるようにストーリーはあるのにテリングができない傾向があります」と田澤さん。「そこを乗り越えるには、自信を与えてくれる存在が必要。海外との共創の一つとして、佐久でも海外の人が町に来て、いいところだねと言ってくれることで、地域の皆さんが元気になり、自信と誇りを取り戻す力となっています。」
地域との共創について、太田さんは「瀬戸内醸造所ができたことで、県外の人が増えたと喜んでいただいていますし、著名なシェフとソムリエと生産者をつなぐことで、すごく喜んでいただいて、それが次の新しいことへのモチベーションに繋がっていると思います。新しくワイナリーからプライベートクルーザーで、いろいろな島の古民家へ泊っていただく宿泊連携をスタートしました。クルーザーの運転手には夜の海の運転に慣れている元・救急救命士の方を採用しています。地域の雇用と新しい仕組みで、お客様に面白いと思ってもらえるコンテンツにしていきたいです」と語ります。
最後にコチュさんから「田澤さんのお話で、お客様のシェアリングという話がありましたが、各事業者の単独のコンテンツを横に広げていくと共創に繋がりますし、海外のお客様の体験も広がります。共創することで、みんなが「いいね」となる状態を作っていきたいです。また地域に行きやすい、地域間を移動しやすい交通システムづくりも重要になってくると思います」という提言で、密度の濃いトークセッションが終了しました。
地域の事業のストーリーを磨き上げるフレームワークを
活用したワークショップ。
ワークショップでは慶應SDMと共同研究で開発した「地域の事業のストーリーを磨き上げるフレームワーク」を活用しながら、いま推進中の事業やこれから手掛けたい事業の魅力の整理〜ストーリー化までのプロセスを体験してもらいました。このワークショップでは、ストーリーを、製品やサービスの良さ、事業に込められた価値や思いがWEBなどを介して、適切に海外顧客に伝わるための「語りの仕組み」と定義しています。
今回の参加者は、首都圏だけでなく名古屋、大阪、岩手など全国各地から、年代も10代から60代まで、職業は学生、会社役員、フリーランスなど様々。共通しているのは、地方創生に興味を持っているという点。参加者が6つのグループに分かれて取り組んでいきます。
プログラムは、以下の4つのパートで構成されています。
①自らの事業を振り返る…中心となる製品やサービス、提供者、地域の3つの側面から事業を整理
②事業の魅力を考察する…上記3つの側面から魅力を表現
③ターゲット顧客を設定・分析する…製品・サービスを最も伝えたいターゲットを想定する
④ターゲットに効果的な伝え方をデザインする…提供する体験をイメージし、それを伝えるキャッチフレーズとキービジュアルを考える
各自が検討した内容をグループ内で紹介し、他の参加者からもアイデアをもらいながら洗練させます。若手の新鮮な意見にベテランが笑顔になったり、ベテランの知見を活かしたアドバイスに、若手が深くうなずいたり、という場面も多くみられました。プログラムが進んでいくと共に、会場にも活気があふれ、「ぜひ、今度、一緒にやりましょう」「うちのいまやっている事業で、こんなお手伝いができそう」など、新しいコラボレーションのきっかけにもなっています。
プログラムの最後は「事業や市場が変化するにつれて、示すべき魅力や表現の仕方も変化します。これからも探求と対話を続けていきましょう」という進行役 慶應SDM山崎さんの言葉で締めくくられました。
日本の各地域が、
その地域にしかない魅力を紡ぎ、発信をすることで、
世界の人々が憧れるディスティネーションを
各地域につくっていく。
CJPFでは約3年にわたり、地域の魅力を磨き上げ、ストーリーとして伝え、国内外から多くの観光客を地方に呼び込み、活性化につなげている全国の事業者にインタビューしてきました。地域の魅力のつくり方を、より多くの次世代の担い手に実現していただきたいと、企画したのが、今回のワークショップ。今後も、このような場を増やしていき、事業者や地域がつながり、日本の各地域が、その地域にしかない魅力を紡ぎ、発信をすることで、世界の人々が憧れるディスティネーションを各地域に作っていきたいと考えています。地域と人が主役のクールジャパンを目指して、今後も活動を続けていきます。
事業のストーリーを磨き上げるワークショップ、
「グラフィックレコーディング」による記録。
地域の担い手による特別講演とクールジャパン・プロデューサーとの対談セッション、そして「地域の事業のストーリーを磨き上げる」ワークショップの記録を「グラフィックレコーディング」として記録しました。当日の軌跡を感じられるグラフィックレコーディング」もぜひ、ご覧ください。
登壇者プロフィール
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田澤麻里香氏
新卒で旅行会社に就職後、ワイン商社で営業として活躍。専業主婦を経て、2016年に長野県へ地域おこし協力隊員としてUターンし(一社)こもろ観光局立ち上げに携わる。その後、観光地域づくりプランナーとして開業。2018年ソーシャルビジネスの起業家として夢アワードin小諸にてグランプリ受賞。翌2019年2月、全国夢アワードにてグランプリ受賞。株式会社KURABITO STAYを設立し、海外から多くのお客様を佐久に呼び込んでいる。
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太田 祐也氏
広島県三原市出身。大学進学をきっかけに上京。25歳で株式会社フォーシーを立ち上げ地方創生のコンサルティングを行う。自ら地方の抱える課題を解決したいと2019年「SETOUCHIを旅するワイン、SETOUCHIを旅するワイナリー」をコンセプトに瀬戸内醸造所株式会社を設立。瀬戸内の様々な産地のワインをつくり瀬戸内の食とペアリングし瀬戸内のテロワール(風土)を国内外に発信。農業、食文化の継承など、地域課題の解決に取り組んでいる。
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コチュ・オヤ氏
トルコ出身。2006年に滋賀県水口市の半導体メーカーにインターンシップのため初来日。日本の大ファンになり、東京大学大学院工学系研究科を修了後、コンサルティング会社へ入社。2017年帰化し、株式会社Oyraa設立。153カ国約2000人の通訳者をオンデマンドで呼び出せる翻訳アプリの運用をスタート。2018年からクールジャパンプロデューサーとして活躍。多文化共生まちづくり会、外国人と共生・協働できる社会作りを目指し、活動を続けている。
Answers to questions
CJPF LIVEにつきまして、皆様より頂戴いたしました質問や回答につきましてご回答させていただきます。
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実際にAIによるメニュー開発など、テクノロジーを活用した食の事例はあるんでしょうか?まだ施策段階ではありますが、ビーガンの領域において、いくつかの先進事例はあります。
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実際にAIによるメニュー開発など、テクノロジーを活用した食の事例はあるんでしょうか?まだ施策段階ではありますが、ビーガンの領域において、いくつかの先進事例はあります。
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