クールジャパン関連産業としてファッション、ビューティの2つの業界から、それぞれ海外展開における特長を有する企業から具体的な事例を交えて講演いただきました。(開催日:2026年2月19日)
登壇者・講演内容
有限会社フルフォードエンタープライズ CEO アダム フルフォード 氏
来日40年を超え、日本の英語に関連するテレビ番組にて翻訳や監修を長年つとめていらっしゃるフルフォード氏より、クールジャパンの見えない資産である日本文化のひとつとして、他人に配慮し、周りの人たちと協力する姿勢がもたらす“相手を想う“ということが、海外では減少しており、外国人からは高い価値に感じられるものであることが紹介されました。
フルフォード氏は、日本独自の文化や考え方が色濃く残る地方にこそインバウンドを呼び込む大きなポテンシャルがあると指摘しました。そして、外国人観光客の来訪がもたらす地方にとってのメリットを以下の3点で提示しました。第一に、直接的な「消費」による経済効果です。第二に、高度な専門性を持つ「人材」との接点です。普段の地方生活では出会えないような知見を持った人々が訪れることで、地域に新たな刺激と可能性がもたらされます。
そして第三に、外部からの意見を「柔軟に取捨選択できる」という、地方側の主体性を活かした利点です。外からの多様な提案をすべて受け入れる必要はなく、地域の意思で「いいとこ取り」をすればよいという、ある種の「都合の良さ」もインバウンドならではの魅力です。
そして、日本の異文化コミュニケーションの課題としては、“相手を想う”文化がある一方で、地方で見られる翻訳が“相手を想わない“ものが主流であるとも指摘しました。日本語としては完璧であるものの、表示される外国語が“日本人のための言葉”で翻訳されてしまって伝わらず、相手の立場からみて“心に響く言葉”に変えていくことが重要ということが発信されました。
最後に、外国人との共創の仕組みとして、“貢献型観光”のアイデアが共有されました。観光客が消費するだけでなく、一緒に地域の未来を開拓してくれるような分散型国際会議を開催し、外国人に日本の地方にいくつかの団体でそれぞれが数日間滞在し、地域の魅力と課題を発見してもらい、旅の最後に全員が集まって情報共有をして提案をしてもらう形式にすることで、その一部は価値のある提案として採用できる可能性もあり、日本の“見えない価値を一緒に価値化する”ことに繋がる動きになるのではないかということが紹介されました。

来日して30年を超えるエルドリッヂ研究所・代表 ロバート・D・エルドリッヂ 氏からは、研究教育と政策の両方で培った学術・実務双方の視点から、日本の文化継承に欠かせない地方の重要性について深く提言されました。
エルドリッヂ氏は、日本にとって大きな課題として少子化・人口減、東京への一極集中を挙げ、復元不可能な文化が失われることを止めるためにも解決の必要性があると問題提起されました。そして根本的な問題として、日本の知恵や人材や時間や自然や空き家などの資源が活用されていないことと、縦割りであることも影響して一つの課題に対して一つの対策となっており、全体的な視点で複数の問題を解決する包括的な政策や対策が取られていないことの二つがあげられました。 最後に、ご自身を例に挙げ、日本にいる外国人は日本人に負けないほど日本が大好きな人も多いので、そのような外国人を巻き込んで大いに活用してくださいとして、日本を愛する外国人との共創や連携促進についての発信が参加者や視聴者の皆さんにも届けられました。
国際ガストロノミー学会代表/Sports Doctors Networkアジア代表 山田 早輝子 氏
山田氏は、約18年海外に在住していたことや、長年グローバルビジネスをされている経験から、海外からみた日本についてビジネスの事例を交えながらご紹介されました。
ハリウッドで活躍する日本人俳優の事例では、かつては「海外が描く日本」を演じざるを得ない状況もありました。しかしながら、“SHOGUN 将軍”では真の日本文化を反映させることを条件に、俳優自らがプロデューサーも兼任。徹底して「本物の日本」を表現した結果、世界的な大ヒットを記録しました。
この成功は、日本人が主体的に関わりながら、ありのままの姿を表現することが評価につながるという証明でもあります。海外に迎合するのではなく、自らも発信し、国際的な場に積極的に打って出ることの重要性が具体的な事例と共に共有されました。
海外からも日本の地域への関心は高く、特にソフト面である、日本のホスピタリティや日本の地域活性はどのような取組があるのかを学ぼうとしていることが伝えられ、山田氏の地域への考えとしても、“地方は日本の中のローカルではなく、地域の特性を活かすことで、世界からみた価値のある目的地”であると思って取り組まれていることが紹介されました。
最後に、山田氏の事業は海外の日本ファンと共に日本の魅力を再編集して、エンタメ、医療、食、地域を横断し、地域資源をナラティブなものとして世界に届けるものです。今後はさらに地域の課題解決に日本の価値を投じること自体が、日本を伝えることになると指摘。これからのクールジャパンは、単に文化を世界に発信し、売り込むという政策に留まるのではなく、世界の仲間と共に社会課題を解決し、日本が「共創の装置」になっていくという新たな指針が共有されました。

クロストークでは登壇者同士の活発な意見交換に加え会場やオンラインの参加者を交えた質疑応答が行われました。
「地域での取組をいかに深化させるか」という点では、次世代の育成や地域のキーマンに関する質問がありました。推進役となる人物像や連携するための具体的な手法についての議論が展開されました。また、戦国武将ゆかりの地や歴史的な寺社仏閣のような地域独自の資源が外国人にとってどのように映り、どのように魅力として届くのかといった議論も行われました。