BCWPから始まる未来への提言。
日本への期待と食を通じた
世界との共創の在り方。

食を通じて世界を変革する。 BCWP(バスク・カリナリー・センター・ワールド・プライズ)レポート。

スペイン王国バスク政府とバスク・カリナリー・センター(BCC)により2016年に創設された「バスク・カリナリー・ワールド・プライズ(BCWP)」は、ガストロノミー界のノーベル賞とも呼ばれています。全世界のシェフを対象として教育、健康、研究、持続可能性、社会的起業家精神、慈善活動、地域文化の保存など広範な領域において、ガストロノミーにより社会に変革をもたらすことを証明する業績をあげた人物に贈られます。2023年度・第13回目のBCWP・国際理事会は日本で開催されました。世界各国から訪れる料理人の活動の先にある世界観と目的を探求し、日本の伝統、知識、ビジョンへの期待感、そして食文化を通じた世界との共創の在り方について、考えていきます。

日本は近代ガストロノミーに大きな影響を与えた国。
課題やチャンスを一緒に考えることで
大きなインスピレーションを得る。

2023年初夏の東京において、アジアで初めて開催されたBCCの国際理事会とBCWP。それが日本で開催されることについて、どのような意義があるのか。イベント開始に先立ち、クールジャパン官民連携プラットフォーム(CJPF)共同会長の辻芳樹氏がBCCディレクターであるホセ・マリ・アイゼガ氏に問いかけました。「日本は近代ガストロノミーにとても大きな影響を与えた国です」と答えるホセ氏。「様々な分野の専門家やコニュニティーが集い、課題やチャンスを一緒に考えることで大きなインスピレーションを得ることができるでしょう。そうした瞬間を日本で作ることに大きな意義があるのです」と続けました。日本のガストロノミーで何が起こっているのか。伝統がどう進化していくのか。新しい世代がどのようにリードしていくのか。イベントを共に体験することで、未来の日本の食文化の姿が浮かび上がってくるはずだと、辻氏の期待は高まりました。

そして、いよいよBCWPの幕が開けました。オープニングではBCC設立当初から緊密に関わり、東京・南青山地区の2つ星レストランシェフで今回のBCWPボードメンバーの一人でもある成澤由浩氏が「食に関わる全ての人が地域の社会問題に対して何ができるか。そのことを日本、アジア、そして世界中に伝えたい」というメッセージを語りました。続いてホセ氏は「BCCは研究・教育・イノベーション・起業支援・イベント組織・ガストロノミーのプロモーションなどのために設立された、一つの大きなエコシステムです」と発表をしました。BCC創設者の一人としてバスク州政府で農業・漁業・食料担当副大臣を務めるビトール・オロス氏は「日本は何千年もの歴史を持ち、文化・伝統を大切にする国で、私たちの見本でもあります」と語りました。そして「ガストロノミーは様々な文化をつなぐ共通の要素でもある。私たちはガストロノミーで社会に変革を起こしたい」と会場にメッセージを届けました。

オロス氏のメッセージに続いて、いよいよ2023年度 BCWPの受賞者の発表です。今回の受賞者は初めての全会一致の決定となったトルコ人シェフのエブル・バイバラ・デミル氏。シリア内戦による難民への対応や地元の女性が家を開放し訪問した観光客に家庭料理を提供するプログラムを立ち上げたことなどが高く評価され、その栄誉を獲得しました。

環境、戦争、貧困、格差、DX。
地球を取り巻く課題や変化に、
食文化や料理人ができることは何か?

次のプログラムは世界を代表するシェフによるセッションです。
■サミットテーマ 1 ~変わりゆく時代~
国際的な影響力を持つシェフのジョアン・ロカ氏は「変革が急速な時代において、立ち止まって考えることが大切。ルーツや文化など、多様性が重要です」と訴えました。ペルー料理のアイコンであるガストン・アクリオ氏は「新しい時代が始まった。共有と連帯のスピリッツがペルーのガストロノミーです」と語ります。日本酒の世界に魅了され、新たな日本酒を造り上げたドンペリニヨンの元醸造最高責任者のリシャール・ジェフロア氏は「日本酒は地球上のどの酒よりも、文化的に多くの意味合いを持つ。愛と尊敬、フレンドリーな形で日本酒に貢献していきたい」と自身のビジョンを語ってくれました。

■サミットテーマ 2 ~新たな時代の足音~
今回初めて来日したオーストラリア人シェフのジョシュ・ニーランド氏は「自分たちの後に続く若い世代の人たちには、この産業の様々な情報が共有されるべき」という意見を表明してくれました。同じく初めて日本を訪れたのは2022年ラテンアメリカベスト女性シェフに選ばれたマノエラ・ブファラ氏は「新しい世代は新しいテクノロジーを経験してほしい。それがあなたを助けてくれるはず」というメッセージをくれました。メキシコのガストロノミーシーンで重要な役割を担うエレナ・レイガダス氏が投げかけたのは「何を持ちたいかではなく、何になりたいかを若者に考えてほしい。若者の変化を助けていきたい」という期待を込めたメッセージでした。

■サミットテーマ 3 ~生きる生態系~
「フィールドに行き、マーケットに行き、小規模生産者に会いに行く。多くの人と話すことが大切です」と語ってくれたのは、有名シェフでありTV司会者でもあるナルダ・レペス氏です。そして世界のベストレストラン50 のトップ10に5年連続で選ばれたピア・レオン氏はこう主張しました――「1人1人がメッセージを出す。小さな活動が大きな変革を起こすことができるのです」。

■サミットテーマ 4 ~未来へのカウントダウン~
デンマークのシェフ、そして数多くの著書を持つフードライターのトリネ・ヘイネマン氏は訴えました。「ガストロノミーの世界には若い才能が必要です。そしてもちろん、女性も一緒にこのジャーニーに参加してほしい。我々はみんな才能を持っている」。タイ料理を世界有数の料理へと昇華させている新進気鋭の若手シェフ、トン・ティティッ・タッサナーカチョン氏は「変化の波がタイのガストロノミーに起こっている。タイ料理は世界のFUSION FOODになる」との考えを述べました。ドミニク・クレン氏のレストラン「アトリエ・クレン」は女性料理長のレストランとして初めてアメリカでミシュラン3つ星を獲得しました。「人生は変化。人生は旅。他人の真似をする必要はない。私たちは自分のストーリーを伝えるべき」という自身の考えを語りました。

ガストロノミーの可能性を拡大する時代へ。
食から未来を共創する。

■サミット総括 ~料理人のこれからの役割~
世界中から影響力を持つ多くの有名シェフが日本に集結した第13回BCWP・国際理事会。未来のガストロノミーの在り方を想像した時、自らが求める進化と妥協せずに取り組んでいきたいこととは何か。ガストン氏は「人々に近い料理。家族で分かち合ってきた料理が重要だ」と考えます。ナルダ氏は「人々に奉仕するための料理が大切になる」と発信しました。「人々はパワーゲームではなく、調和やつながりを求める」と話したのはリシャール氏。

セッションの最後に、オーガニックな旬の食材を大切にし、サステイナビリティと自然保護への取り組みが評価され、数々の賞を受賞している成澤氏が自身の想いを参加者に伝えました。「食べるということは、命をつないでいく行為。文化は人間でなければつくれないもの。シェフは食のプロとしてガストロノミーという言葉を超え、ガストロノミー+文化の2つをバランス良く両立させていくことが求められます。より美味しく、より美しく、より楽しく。それがガストロノミーの将来像ではないでしょうか」。

ガストロノミー界のノーベル賞とも言われるBCWPというイベント全体を通して、CJPF共同会長の辻氏は多くのインスピレーションを受けました。そして日本が世界のガストロノミーに大きな影響を与えているという事実を強く認識できたことは、「食から紡ぐ日本の未来価値」を掲げるCJPFにとって大きな意味を持つと言えるでしょう。CJPFの取り組みと発信が、世界との共創を実現し、社会を変革する一歩となる――そんな未来が、これから少しずつかたちづくられていくはずです。

文・三浦孝宏
【バスク・カリナリー・ワールド・プライズ公式サイト:www.basqueculinaryworldprize.com】

Answers to questions

CJPF LIVEにつきまして、皆様より頂戴いたしました質問や回答につきましてご回答させていただきます。

  • 実際にAIによるメニュー開発など、テクノロジーを活用した食の事例はあるんでしょうか?
    まだ施策段階ではありますが、ビーガンの領域において、いくつかの先進事例はあります。
  • 実際にAIによるメニュー開発など、テクノロジーを活用した食の事例はあるんでしょうか?
    まだ施策段階ではありますが、ビーガンの領域において、いくつかの先進事例はあります。
  • 実際にAIによるメニュー開発など、テクノロジーを活用した食の事例はあるんでしょうか?
    まだ施策段階ではありますが、ビーガンの領域において、いくつかの先進事例はあります。
  • 実際にAIによるメニュー開発など、テクノロジーを活用した食の事例はあるんでしょうか?
    まだ施策段階ではありますが、ビーガンの領域において、いくつかの先進事例はあります。
  • 実際にAIによるメニュー開発など、テクノロジーを活用した食の事例はあるんでしょうか?
    まだ施策段階ではありますが、ビーガンの領域において、いくつかの先進事例はあります。